| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) E1-11

市民参加による干潟底生動物の調査 3.モニタリング手法としての有効性

*鈴木孝男(東北大院・生命科学),佐々木美貴(WIJ)

干潟生態系の生物多様性を把握するためには、そこに生息する底生動物(ベントス)群集の調査が必須である。しかしながら、底生動物として干潟に出現する分類群は多岐に渡り、種の同定も簡単ではないことから、一般市民が気軽に調査に関わることができないのが実情である。

そこで、市民が自らの手で、干潟に生息する底生動物群集を調査できる「市民調査の方法」を構築するとともに、調査手法を解説したガイドブックを作成した。ガイドブックを参照しながら調査を行うことで、本手法はかなりの程度再現性があり、他地域との比較も可能で、しかも将来の変化をモニタリングできる継続性のあるものと考えている。

本講演では、「干潟生物調査ガイドブック〜東日本編〜」を用いて、実際に市民の方々に調査をしていただき、採集した底生動物の種の同定も各自が行うことで、調査手法の有効性について検証を行った結果について報告する。

種の判別については、現場で使えるガイドブックが不可欠であった。一般の図鑑では種間のサイズの大小が一目で分かるようにはなっていないため、形態の似ている種類を混同してしまうこともあったことから、比較的普通に見られる種類について、実物大の写真を使って濡れても大丈夫なようにラミネート加工した簡易図鑑も作成した。

ところで、環境省では、モニタリングサイト 1000 事業の中で、干潟に生息する底生生物の定量的な調査を開始している。このうち、仙台湾の「松川浦」と東京湾の「盤洲干潟」において、モニタリングサイト 1000 調査の手法と、市民調査の方法を同時期に行い、出現種にどのような差異が生じるかを比較してみた。本講演ではその結果について紹介するとともに、市民による干潟生物のモニタリング手法としての有効性について考えてみたい。


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