| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) E2-07

陸水環境保全のための指標種としてのイシガイ類の有用性

*根岸淳二郎(北大 院 地球環境),大森徹治(国交省 木曽川上流),萱場祐一(土木研 自然共生セ),久米学(土木研 自然共生セ),佐川志朗(土木研 自然共生セ),真田誠至(土木研 自然共生セ),永山滋也(土木研 自然共生セ),宮下哲也(土木研 自然共生セ)

イシガイ類(イシガイ目淡水二枚貝)は、世界的にその生息範囲の縮小、および生息数・種多様性の減少が著しい生物分類群のひとつである。わが国においても、かつては多くの陸水環境においてイシガイ類は一般的に見ることができたが、近年の人為的な自然環境の改変によって、その生息環境の劣化が急速に進行している。イシガイ類は特定の魚類との間に成り立つ片利共生関係を持つことから、魚類を含めた陸水生態系の自然環境の状態を反映する環境指標種としての機能が示唆されてきた。しかしながら、その指標種としての有用性を定量的に示した研究はこれまで報告されていない。そこで、本研究では、国内におけるイシガイ類の主要な生息環境であるワンド域(木曽川)および農業用排水路(岐阜県関市)において、同所的にイシガイ類と魚類群集の生息状況を調査することで、その指標種としての有用性を検証した。両水域タイプにおいて、魚類の種多様性およびShannon-Wienerの多様度指数は、イシガイ類の種多様性あるいは単位時間当たりの採捕個体数と有意な正の相関関係をもって説明された。この結果から、イシガイ類は少なくとも魚類を含めた陸水生態系の環境指標種として機能することが示された。また、イシガイ類の分布域縮小や生息数減少から魚類群集の種多様性の減少が推測され、イシガイ類の生息環境保全が重要であることが示唆された。


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