| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) F1-05

湿原河川生態系の生物多様性推定におけるリモートセンシングの有用性について

*福島路生,島崎彦人,加藤秀男(国立環境研)

本研究では、北海道北部を流れる緩勾配の小河川において、淡水魚類と底生動物の空間分布あるいは群集構造を、現地調査から得られる生物学的データによって推定する生物モデルとリモートセンシングから取得されるランドスケープスケールの非生物的な環境要因から推定するリモセンモデルによって推定し、2つのモデルの推定能力を比較した。リモートセンシングによって河川生態系を知ることの不確実性を定量化し、この技術の可能性と限界を探ってみた。

調査河川上流の6本の支流にそれぞれ5か所ずつ、合計30か所の調査地点を設け、淡水魚類相と底生動物相を調べ、同時に生息環境を計測した。淡水魚類は電気ショッカーを用いたシングルパス法により、また底生動物は調査地点中央の瀬頭で25cm四方のサーバーネットを用いて採集した。使用した統計モデルは回帰木(RPART)である。

魚類調査では、淡水魚類9種とスジエビを採捕した。また底生動物調査では水生昆虫など58分類群を採集した。淡水魚類の生物モデルでは決定係数の平均が0.400(レンジ0.240-0.607)、リモセンモデルでは0.269(0.119-0.607)であった。また底生動物の生物モデルでは平均0.346(0.113-0.721)、リモセンモデルでは0.224(0.067-0.628)であった。個々の魚種や分類群の生息密度を推定するモデルよりも、種数や多様度、摂餌機能群の現存量などを推定するモデルにおいて、リモセンモデルでの決定係数の低下が著しい傾向が淡水魚、底生動物ともに認められた。河川生態系の生物多様性や群集構造に関わる属性はリモートセンシングによる推定が難しく、生物学的な情報が欠かせないことが分かった。


日本生態学会