| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) F2-04

水生ミミズに対する水田農薬の生態影響評価

*谷地俊二, 中森泰三(横浜国大院・環境情報), 伊藤豊彰(東北大院・農), 金子信博(横浜国大院・環境情報)

水生ミミズは栄養塩循環を促進する機能をもつが、農薬の生態影響についてはこれまで考慮されてこなかった。そこで、水田に生息する水生ミミズに対する除草剤のピラゾレートの影響を調べた。試験方法はOECD TG-225に準拠したが、OECD TG-225で標準種として使用されるオヨギミミズ (Lumbriculus variegatus)は、ヨーロッパで普通種であるが日本では生息が確認されていない。そこで、日本の水田に普通に生息するユリミミズ (Limnodrilus hoffmeisteri)を用いてオヨギミミズの結果と比較した。予備実験で、1か月間の暴露による慢性毒性影響を評価した。オヨギミミズとユリミミズ共に、無処理区とピラゾレート処理区 (濃度勾配; 0.01、0.1、1、10、100、1,000 mg/kg)を設けた。評価はロジスティック回帰モデルにあてはめ、半数影響濃度 (EC50)を推定した。個体の成長に対して、オヨギミミズは10,835.5 mg/kg、ユリミミズでは値がモデルにあてはまらず推定ができなかった。繁殖影響は、分割増殖するオヨギミミズのEC50はモデルにあてはまらず推定できなかったが、ユリミミズのcocoon (卵苞)生産は5.5 mg/kgと推定した。予備実験の結果より、ピラゾレートの長期暴露によって、ユリミミズの繁殖が現実的な濃度で影響を受ける可能性が示された。現在、上記2種を用いて濃度勾配を2.5、5、10、20、40、100、1,000 mg/kgに設けた試験を行なっている。この研究により、水生ミミズの種感受性の違いを明らかにする。そして世界的標準試験法と、地域固有の影響の違いを数値化して示す。


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