| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) G2-02

日本列島における土壌呼吸の時空間分布に関するモデル推定

伊藤昭彦(国環研),市井和仁(福島大),加藤知道(JAMSTEC),後藤 誠二郎(国環研),梁乃申(国環研)

土壌呼吸は、陸域生態系からの二酸化炭素放出のうち半分以上を占める大きなフラックスであり、その環境応答や時空間パターンを明らかにすることは炭素収支の高精度な解明に向けて不可欠である。実際に、チャンバー法などを用いた多数の観測が行われてきたが、生態系以上の広域スケールで土壌呼吸量を評価することは、メカニズムの複雑さや空間的不均質さのため非常に困難である。近年発達してきた物質循環を扱う生態系モデルを利用することで、地域から大陸スケールの炭素収支に関する研究が行われるようになっている。しかし、現在の生態系モデルには多くの不確実要因が残されており、観測結果を十分な信頼性で再現して解析に寄与するには精度評価・検証とモデル改良を重ねることが必要である。本研究では、日本列島の自然生態系を対象にして、5種類の陸域生態系モデル(Biome-BGC、CASA、LPJ、SEIB、VISIT)によるシミュレーションを実施し、土壌呼吸に関する比較解析を行った。日本列島は南北方向の温度勾配が顕著であり、概して水分制限は厳しくないため、いずれのモデルで再現された土壌呼吸もそのような環境条件を反映した、緯度・高度方向の空間分布を示した。また、夏季にピークを示す季節変化が明瞭であるなど、定性的には観測されたパターンをよく再現していた。しかし、多くの地点では推定された土壌呼吸の絶対値にモデル間で大きな差が見られ、大きな推定不確実性が残されていることが示唆された。特に、モデル間で根呼吸の推定方法と結果に大きな差異があり、観測に基づくプロセス研究と協力して不確実性を低減していくべきと考えられる。また、いくつかの地点ではチャンバーによる観測データとモデル推定結果を比較しており、撹乱影響の導入が生態系モデルによる炭素収支評価の課題である点も明らかになった。


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