| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) H1-02

必須資源をめぐる競争によってプランクトンの多様性のパラドクスは進化的に解けるのか?

*水野 晃子(総研大・葉山), 佐々木 顕(総研大・葉山)

均一と考えられる環境中に、予想される資源の数よりも多くのプランクトンの種が共存していることをプランクトンの多様性のパラドクスという。このパラドクスは、同じ資源を利用する種は共存できないという競争排除則からはずれるため、古くからさまざまな研究者の興味を惹いてきた。事実、植物プランクトンの様々な資源要求量を決定すると言われる体を構成する元素の比には、種によって大きなバリエーションがあることが知られている。

これまで、このパラドクスを解く仮説の一つとして、環境中の資源量がごく小さなスケールの時間的変動や空間的な異質性があることで、資源要求性の異なる種が資源の種類数よりも多く共存できるという考えが挙げられてきた。しかし、この時間変動と空間的異質性による多様性の維持は、植物プランクトンの資源要求性に進化を仮定することで、簡単にやぶられる。また、そもそも資源要求性の異なる種がどのようにして生じてきたのか?も明らかになっていない。例えば、二つの資源を巡る競争において、その資源が生物にとって必須である場合には、ただひとつの種からなる群集が収束安定でかつ進化的安定であることが示されている。しかし,このモデルには資源要求性のトレードオフが組み込まれておらず、現実の植物プランクトンに当てはめるには不都合である。

そこで、我々は植物プランクトンのためのAdaptive dynamicsモデルを構築し、植物プランクトンの資源要求性の進化について解析を行った。その結果、複数の資源をより均等に使う植物プランクトンにGeneralistのコストを仮定すると、初期条件によって異なるタイプの植物プランクトンが進化することが明らかとなった。この結果は、同じ環境条件でも複数の集団が存在すれば、植物プランクトンの資源要求性の多様性は進化することを示している。


日本生態学会