| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) H1-11

オオオサムシ亜属雌雄交尾器形態のQTL

*曽田貞滋,雀部正毅(京大・理),高見泰興(神戸大・人間発達環境)

体内受精を行う動物の交尾器形態の多様化は進化生態学的に注目されてきたが,著しい種間差や極端な形態をもたらす遺伝的基盤については,まだほとんど解明されていない.本研究では,雌雄交尾器に多様な「錠と鍵」的対応をもつオオオサムシ亜属を対象にして,種間の交尾器形態差にかかわる量的遺伝子座(QTL)を調査した.まず,交尾器形態が著しく異なるが,野外で交雑帯を形成しているイワワキオサムシとマヤサンオサムシの種間交雑によって,F2世代を作成した.このF2世代を用いてAFLPおよびマイクロサテライト遺伝子座による連鎖地図を作成し,雌雄の交尾器形態(雄の交尾片の長さ,幅,重さ,雌の膣盲嚢の長さ,幅)について,QTLを探索した.その結果,各形質について,数個の大きい効果を持つQTLが見いだされた.交尾片の長さに関しては,相加遺伝効果はマヤサンオサムシ方向にすべて正,幅に関してはイワワキオサムシ方向にすべて正となっており,交尾片の形態分化は強い方向性選択によるものであることが示唆された.膣盲嚢のQTLは雄形質のQTLと連鎖していたが,相加遺伝効果の方向は一定していなかった.交尾器の形が効果の大きい少数のQTLで決定され,しかも雌雄のQTLが連鎖していることは,集団内で強い方向性の性選択が作用したさいに,極端な形態の進化や雌雄交尾器の共進化を可能にした主要因であると推定される.


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