| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) H2-10

外来樹種人工林の生物多様性保全機能

*尾崎研一, 佐山勝彦, 上田明良(森林総研北海道支所)

カラマツは本州中部等が自生地であり、北海道では外来種(国内外来種)である。北海道の外来種リストである「北海道ブルーリスト」ではカテゴリーAにランクされ、在来生物への影響が報告されている。カラマツは北海道の人工林の3割を占め、そのほとんどが低標高地域にあるため、本来、その地域に存在する落葉広葉樹林の多くがカラマツ人工林に代わっている。このようなカラマツの大規模植林により、在来種が消失する一方で、他の外来種が侵入することが危惧される。そこで、北海道内でカラマツ人工林の多い道央地方と道東地方においてカラマツ人工林、落葉広葉樹天然林、そして在来種であるトドマツの人工林を選び、各林分において蛾類と林床植生を調査した。

その結果、697種の蛾類と267種の植物が記録されたが、このうち外来種は蛾類で6種、植物で12種だけであった。このうちの蛾類3種はカラマツ林で有意に個体数が多かったが、これらはいずれもカラマツ食であった。つまり、カラマツの植林にともなってカラマツを食べる蛾類数種の侵入はみられたが、それ以外の外来種の侵入はほとんどなかった。

次に在来種への影響をみると、蛾類の場合、林分あたりの種数は天然林で約2割多かったが、カラマツ林でも平均150種が採取された。各種の個体数を解析すると、天然林とトドマツ林で個体数が多い種は10種以上みられたが、カラマツ林で個体数が有意に多かったのは2種だけであり、外来樹種の人工林に多い在来種は少ないと考えられた。一方、林床植物の場合、林分あたりの種数はトドマツ林が最も多く、天然林とカラマツ林では違いがなかった。林床植物の種数にはササの被度が影響していると考えられた。


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