| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) J2-06

北海道で大発生したマイマイガ地域個体群の特徴

*東浦康友,山口博史,倉沢美穂,時下進一

マイマイガはこれまで、カラマツ林や広葉樹林で何度も大発生しており、2007年から北海道・東北の広い範囲で大発生した。今回は、大発生に至る経過を解析したので報告する。

マイマイガは、1頭の雌が1卵塊しか産卵しないので個体群動態の解析に適している。北海道美唄市のシラカンバ林で卵塊の全数(=全産卵雌数)調査を実施した。1974年から1982年の9年間は約1haの林で、1991年から2009年の19年間は0.4haの林で調査した。この間、2007年から2009年までha当たりの卵塊数が104個を超え大発生状態となった。その他の年は、0個の時もあったが(解析には卵塊数+1の対数変換を使用)、平衡状態としては101〜2個程度であった。

Royama (1981: Ecological Monographs 51, 473-493) は、年一世代の昆虫の個体群動態解析法として二次の密度異存過程を提案している。いま、t世代目の卵塊数(=産卵雌数)をxtとし、Xt=log(xt)とすれば、

Rt=a1Xt+a2Xt-1+b (R: 増殖率)

Rt=Xt+1-Xtであるから(いずれも対数変換した値)、Xt+1=(1+a1)Xt+a2Xt-1+b

9年間と19年間のマイマイガ個体群動態に、この二次の密度異存過程を適用すると、大発生しなかった9年間と、大発生年を含む19年間では、それぞれ、

Xt+1=0.358Xt-0.614Xt-1+1.831 (r2=.938)と、

Xt+1=1.225Xt-0.626Xt-1+0.968 (r2=.705) となり、いずれの期間の変動過程も良く表された。係数の違いから、大発生期間では振動幅が大きく、平衡密度はそれほど違わなかった。

美唄市の他に、札幌市南区小金湯と、千歳空港近くの安平町早来での調査結果を、ミトコンドリアDNAハプロタイプの変動と併せて発表する。


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