| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) K1-11

異なる土壌水分条件下におけるダケカンバの形態,フェノロジーと光合成機能の応答

*田畑あずさ,小野清美,隅田明洋,原登志彦(北大・低温研)

ダケカンバ(Betula ermanii)は北方寒冷圏に生育する落葉広葉樹であり,湿潤な日本や年間降水量の少ないロシア極東といった異なる水分条件下の生育地に幅広く分布する。植物が様々な水分条件に適応し生育するためには,水分不足条件下での光合成速度の低下に対し形態的・生理的に応答することが必要不可欠であり,ダケカンバも生育地の水分条件に応じてその形態や生理的応答を変化させていると考えられる。そこで,寒冷圏に生育するダケカンバがどのように環境に適応し,生存・生長しているのかを解明するため,本研究では異なる土壌水分条件下で生育したダケカンバ苗木を用い,個体全体の形態や葉のフェノロジー,光合成機能にどのような影響を与えるのかを調べた。次に一年間の乾燥処理実験について報告する。

ダケカンバ苗木は,二週間に一度灌水を行う個体を乾燥処理個体,週に二度灌水を行う個体をコントロールとして生育させた。ダケカンバの苗高と全根長,全個体重量は乾燥処理個体で小さく,個体の部位別では葉重と根重が乾燥処理個体で小さい傾向を示した。根とシュートの重量比は処理の影響を受けずほぼ一定の値であり,根重あたりの根長は乾燥処理個体で大きい傾向を示した。飽和光下での光合成速度は乾燥処理個体で低下が見られ,葉内二酸化炭素濃度に対する光合成速度は処理開始後およそ三週間後に乾燥処理個体では低下が見られたが,処理開始後およそ六週間後には処理の影響を受けない傾向を示した。発表では,これらの形態的変化や光合成機能応答の他に葉のフェノロジー,光阻害を防ぐための過剰光エネルギー防御機構反応の応答について報告する。また,二年連続して異なる土壌水分条件下に生育したダケカンバ苗木の応答との比較も議論したい。


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