| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-014

北海道北部稚咲内砂丘間湿地・湖沼群の植生の現状

*藤村善安(北大・植物園), 水田裕希(北大院・農), 冨士田裕子(北大・植物園)

北海道北部豊富町・幌延町の日本海にそった稚咲内砂丘林には、発達した砂丘列の間に200個以上の湖沼と低層湿原や高層湿原がみられ、我が国の他地域では見ることのできない特異な景観を呈している。近年この砂丘間に成立している湖沼群の水位が、低下傾向にあることが報告され、その原因やそれが生態系に及ぼす影響について明らかにすることが求められている。そこで本研究では、これまで基本的な情報が不足している植生について、群落記載を行い、今後の研究の基盤となる情報を整備し、さらにこの地域の植生を規定する重要な環境傾度についても考察を行った。

植物社会学的植生資料(既報の報告書より66地点、演者らの調査58地点)をTWINSPANで分類した結果、本地域の植生は、大きく湖沼植生と湿原植生にわかれ、湖沼植生はネムロコウホネ群落、フトイ群落、コウホネ・トウヌマゼリ群落、コウホネ・ドクゼリ群落、コウホネ・フトイ・タヌキモ群落の5つに、湿原植生はツルコケモモ・ヌマガヤ群落、ササ群落、ツルスゲ・ドクゼリ群落、ミゾソバ・クサヨシ群落、ヨシ・イワノガリヤス群落の5つに区分された。

DCAによって序列化した結果、第1軸(固有値0.820)に沿って一方の端をネムロコウホネ群落とし、他方の端をササ群落とツルコケモモ・ヌマガヤ群落とする群落の配列がみられた。この配列は過湿から適潤へと変わる傾度に対応していると考えられた。また第2軸(固有値0.626)ではササ群落とツルコケモモ・ヌマガヤ群落の違いが、第3軸(固有値0.388)ではミゾソバ・クサヨシ群落とツルスゲ・ドクゼリ群落の違いが強調された。これらは貧栄養−富栄養傾度や、湖沼の水位低下履歴などに関係すると推測された。


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