| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-026

長野県南部新山川流域における水田雑草群落と立地環境条件との関係

*新谷大貴(信大・農),大窪久美子(信大・農)

近年,水田環境は多様な生物の生息生育する生態系保全機能を持つ場として注目されてきた。その中でも現在,多くの水田雑草は絶滅危惧種に指定され,除草剤の散布や過度の施肥による富栄養化,圃場整備や乾田化といった近代的農業による水田環境の変化により負の影響を受けていることが問題となっており,これらの種の保全が急務である。生物多様性保全の観点からは分布情報や立地環境条件との関係性の基礎的データはあまり蓄積されておらず,基本的な課題となっている。そこで本研究では比較的良好な水田環境が残存している本調査地域において,流域内での水田雑草群落の構造や分布,これらと立地環境条件との関係を明らかにし,保全策を検討することを目的とした。

調査地域は長野県南部の新山川流域(伊那市:標高約700~1000m)で,水稲栽培が行われている。調査プロットは上流および中流,下流の3地区で計31筆を選抜し,各筆1m^2の方形区を3プロット設置した(計93プロット)。群落調査は本田内の水田雑草群落を把握するため,2009年9月~10月にプロット内に出現した植物種名と被度,群度(Braun-Blanquet 1964) ,草高を測定した.出現種は生育形,生活形及び根茎形,散布形に分類した。また,環境条件を把握するため,2009年10~12月に非灌漑期における本田に流入する水路の水温およびpH,EC,DO,本田内の湛水面積割合,区画面積,斜面方位,水田間傾斜を測定した。

調査の結果,93プロットにおいて89種の植物種が出現した。環境省版レッドリスト掲載種ではミズマツバおよびウキゴケ,イチョウウキゴケ,シャジクモ等の6種,長野県レッドリスト掲載種ではサワトウガラシ等の8種(うち非維管束植物が5種)を確認した。発表では,群落構造を明らかにし,立地環境条件との関係性について考察する予定である。


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