| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-052

シカ食害の有無による下層植生の種構成及び現存量の違い

*坂井百々子(京大院農),福島慶太郎(京大フィールド研),徳地直子(京大フィールド研)

近年、シカ(ニホンジカ)の急増により、日本の森林の多くで食害が報告されている。しかしながら、その多くが種構成などの景観的な調査であり、定量データは少ない。特に下層植生はその量的な少なさから無視されがちであった。最近になり,物質循環における下層植生の多様性の重要さが見直されており、その機能に関しても注目されているが、そのためには定量データが必要不可欠である。そこで、シカ食害がみられる森林で下層植生の種組成および現存量を把握し、物質循環への影響を明らかにすることを目的とした。

調査は、7年生と9年生スギ人工林、および天然生林(シカ柵内外)にて行った。2008年秋に、上記2ヵ所で下層植生の被度調査、刈り取り調査、植物体の窒素(N)濃度の分析を行った。

人工林では、4年前の調査時に比べてシカの不嗜好性といわれる種が増加していた。また、現存量を上層木のスギと比較すると、7年生人工林では下層植生が全体の45%を占めた。これらの結果から、幼齢人工林の物質循環を考える際、下層植生は無視できないことが分かった。

天然生林では、シカ柵内外で出現種数が大きく異なった。柵外において木本種は種数、現存量ともに非常に少なく、木本の(実生)更新が阻害されている可能性が考えられた。草本種は、柵内で多様性が高く、N濃度の高い種が多くみられた。これに対し、柵外ではシカの不嗜好性であるシダ2種が現存量全体の77%を占めており、この2種が下層植生を特徴づけている。種ごとに植物体のN濃度が異なる事などから、採食圧の有無による構成種の違いが下層植生の物質収支に重大な影響を与えていると考えられた。


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