| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-053

林冠構成種によって異なる展葉・落葉フェノロジーが林床の植物種組成に及ぼす影響

*大山 拓郎, 斎藤 時子, 紙谷 智彦(新潟大・院・自然科学)

林冠被覆の程度や構成種の違いは林内の光環境をモザイク状に多様化させる。また、樹種によって異なる展葉・落葉フェノロジーは季節的な光環境の違いを生み出す。一方、低木層による被陰は草本層の種多様性に負の影響を与えることが知られている。これらのことから、空間的・季節的な光環境の変化と林冠層・低木層の相乗的な被陰効果が林床の植物種組成に影響を与えていると考えられる。

本研究は、(1)林冠構成種の違いが低木層の組成に与える影響、(2)低木層の組成の違いが草本層の組成に与える影響について明らかにし、それらの要因として(3)樹種によって異なる空間的・季節的な光環境の変化が林床の植物種組成に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。

調査は新潟県阿賀町の落葉広葉樹二次林40林分で行った。各林分に100m2の調査プロットを設置し、毎木調査を行った。植生調査は各プロット内に1m×1mのコドラートを40個設置し、出現した全ての維管束植物を草本層(h≦0.5m)、低木層(0.5m<h<2m)に分けて記録した。各林分の季節的な光環境の変化を評価するために、全てのコドラートにおいて展葉期と落葉期に一週間間隔で光量子センサーにより光合成有効光量子束密度を測定した。また、その他の環境要因として土壌水分、pH、リターの厚さを記録した。

低木層を常緑優占・落葉優占・低木無しの3タイプに分類したところ、これらの構成比は林冠木のフェノロジーの違いによって有意に異なった(χ2-test,p<0.00)。また、林冠優占種が同じタイプであっても低木層の組成の違いにより草本層の植物種の出現頻度には偏りがみられた(Fisher’s exact test)。以上の結果より、落葉広葉樹林における林冠層と低木層の樹種構成の違いが林床に複雑な光環境を生み出し、そのことが林床植物相を多様にしていることが示唆された。


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