| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-086

オオウバユリ個体群の遺伝構造の地理的変異

*早船琢磨, 大原雅

植物の個体群は、その種がもっている基本的な生活史特性による「系統的制約」とその種が生育する物理的環境・生物的環境による「環境的制約」の相互作用によって維持されている。本研究の対象種である一回繁殖型多年生草本のオオウバユリは北海道全域から本州北部にかけて広く分布し、その生育環境も低地から山地まで多様である。またオオウバユリは、種子繁殖と娘鱗茎による栄養繁殖の2つの繁殖様式をもつ。これまでの研究で札幌近郊の個体群では、各個体群の生育環境の違いが個体の成長や2つの繁殖様式への依存度に変化を与え、その結果個体群間で他殖率や遺伝的多様性に変異が生じていることが分かってきた。

そこで本研究では、オオウバユリ個体群の地理的分化に焦点をあて、個体群間の個体サイズおよび遺伝的分化に関する調査を行った。野外調査および遺伝解析用の葉のサンプリングは、北海道内の26個体群、青森県内の2個体群の計28個体群で行った。各個体群で開花個体の個体サイズ(地際直径)と個体あたりの花数および果実数の計測を行った。また遺伝解析は9つのSSRマーカーを用い、各個体群の遺伝的多様性と近交係数を算出した。その結果、北方に位置する個体群ほど個体サイズが増加する傾向が認められた。また個体サイズが大きい個体ほど花数が多い傾向も認められた。一方、遺伝的多様性に関しては、北方の個体群ほど多様性が減少する傾向が認められた。また地理的距離と遺伝的距離の関係を見たところ、地理的距離が大きくなるほど遺伝的距離も大きくなる傾向が認められた。今回の調査から、オオウバユリ個体群は、個体サイズや遺伝的多様性に関して地理的な変異が存在することが明らかになった。


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