| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-094

新潟県の風穴に分布する絶滅危惧種エゾヒョウタンボクの生育状況

*指村奈穂子(東大・農・森園管理),古本良(林木育種センター),斎藤久夫(東蒲自然同好会),中沢英正(津南町自然に親しむ会),池田明彦(品川区役所)

新潟県の風穴に分布する絶滅危惧種エゾヒョウタンボクの生育状況

指村奈穂子(東大院農),古本良(林育セ),斎藤久夫(東蒲自然同好会),中沢英正(津南町自然に親しむ会),池田明彦(品川区役所)

エゾヒョウタンボクは南千島、サハリン、北海道から本州北部の数ヶ所(いずれも風穴地)に隔離分布するスイカズラ科植物であり、環境省レッドリストで絶滅危惧II類(VU)に指定されている。本研究の目的は、生育状況と温度の関係、繁殖特性を調査し、本種の保全に資することである。

新潟県には4箇所の生育地が確認されている。この4箇所で植生調査、毎木調査および微地形測量を行い、生育地内部と周辺の数箇所で地表面の気温を測定した。また開花期には送粉者、結実期には散布者の観察を行い、袋かけをして結実率を調べた。

調査の結果、本種は崖錐の風穴地で潅木状に密生しており、植生は高木層を欠き、被度の低い亜高木層、密な低木層、疎な草本層に特徴づけられた。幹数の多い生育地では485m2に1990本が生育し、最大根際直径は23.4mmであった。生育地中心部の気温は夏季でも12℃を超えなかったが、生育地の周辺では24℃まで上昇した。夏季の低温が本種の生育を可能にしていると推測される。発表ではより詳細な解析結果を示す。開花期にはコマルハナバチが観察され、鳥類による果実の採餌は全く見られなかった。袋かけの結果、わずかに自殖も行うことが明らかとなったが、ほとんどの花が他殖を行っていると考えられた。有性繁殖による更新は正常に行われていない可能性が示唆された。


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