| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-178

シオジの幹肥大生長は種子の豊凶や雌雄により異なるか?

*崎尾均,高橋もなみ(新潟大・農),比嘉基紀(森林総研),川西基博(鹿児島大・教)

シオジは雄花をつける雄個体と両性花をつける両性個体をもつ雄性両性異株である。一般に雌雄異株の植物においては雌個体のほうがより多くのコストを繁殖に投資し、その結果、雄個体はより多くの資源を栄養成長に投資することが予想されている。しかし、実際にはこの現象はそれほど多く確認されているわけではない。本研究では、1:シオジの幹直径成長が雄個体と両性個体との間で異なるか?、2:開花結実が幹直径生長に影響するか?について検討を行った。

埼玉県秩父市の東京大学秩父演習林内(大血川管内)のシオジの天然林と人工林において胸高直径を1987年から2年ごとに測定するとともに2007年春からはバンド式デンドロメーターを設置し、一ヶ月ごとに直径を測定した。また、これらの個体の開花結実状態を把握するために、1990年から毎年、双眼鏡による目視によって開花と結実量を5段階で評価した。

シオジの天然林においては22年間の胸高直径の変化から雄個体の方が両性個体より直径成長量が大きい傾向にあった。一方、天然林より個体サイズの小さな人工林では全く差が見られなかった。天然林、人工林ともに種子生産には豊凶が見られたが、開花結実の周期は天然林の方が短く、豊作年が多く訪れた。それに対し、人工林では結実しない年が多く見られた。また、デンドロメーターによる2年間の直径成長量の測定においても、天然林の両性個体では結実年に成長量が減少する傾向が見られた。

これらの結果から、雄性両性異株であるシオジにおいては両性個体のほうがより多くのコストを繁殖に投資しする一方、雄個体はより多くの資源を幹の成長に投資していることが示唆された。


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