| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-239

異なる環境間での鳥類による種子散布特性の比較

*藤津亜季子(農工大・農), 山崎良啓(京大院・農), 直江将司(京大・生態研), 正木隆(森林総研), 小池伸介(農工大・農)

鳥類は樹木の主要な種子散布者とされる。一方、樹木は立地環境の違いによって結実量や果実の成熟時期などが異なると考えられ、このような樹木側の要因の違いにより、鳥類による種子散布の特性は異なると考えられる。

そこで本研究では、茨城県北茨城市の小川群落保護林の林内とその林縁部で、鳥類による種子散布特性の違いを明らかにすることを目的とした。対象とした樹木は、高木はカスミザクラ、ミズキ、コシアブラ、低木はニワトコ、ヤブデマリ、ムラサキシキブ、ニシキギである。量的な種子散布の要素である鳥の訪問頻度と採食果実数を測定するため、鳥種ごとに訪問個体数、採食個体数、採食果実数、滞在時間を測定した。その結果、いずれの樹木でも結実がみられたが、樹木への鳥類の訪問数は、低木では非常に少なかった。樹木の結実フェノロジーは、カスミザクラでは林内の樹木よりも林縁の樹木のほうが2週間〜1ヶ月、ミズキでは1ヶ月ほど早かった。一方、鳥類の樹木への訪問は、カスミザクラでは林縁・林内ともに成熟果実量のピークと鳥類による訪問のピークが一致しなかった。特に林内の樹木では、鳥の訪問のピークが成熟果実量のピークよりも遅れた。ミズキは、林縁では鳥の訪問のピークが成熟果実量のピークよりも早かったが、林内では両者のピークは一致した。なおコシアブラは、林縁部では鳥の訪問がなかった。

以上の結果から、(1)高木と低木では鳥類による利用頻度が異なる、(2)樹木の立地環境によって同樹種間でもフェノロジーが異なる、(3)鳥類の訪問のピークと樹木の成熟果実量のピークは必ずしも一致しない場合があることから、鳥類による種子散布特性は樹木側の要因によって異なることが示唆された。


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