| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-253

縞枯林分におけるシラビソ・オオシラビソ林の外生菌根菌子実体相の解明

*寺田篤人(東大院・新領域),鵜川信(森林総研),福田健二(東大院・新領域)

陸上に生息する多くの樹木の根には菌根菌が共生しており、菌根菌の一種である外生菌根菌は植物の細根の細胞隙間に侵入する。外生菌根菌は、林分の発達段階にともなって、その群集構造が変化している可能性が指摘される。したがって、林分の発達にともなう外生菌根菌の群集構造の変化パターンを明らかにすることは、木本群落と外生菌根菌群集との関係を考える上で重要な知見となる。

そこで本研究では、林分の発達にともなう地上部の外生菌根菌子実体相の変化パターンを解明することを目的にし、連続した発達段階の林分において、子実体の発生調査を行い採取した子実体について、DNAを用いた同定を試みた。

調査地は、長野県北八ヶ岳縞枯山の南斜面とし、縞枯林分にトランセクトを設置し、トランセクト内に発生した子実体を採取し、その発生位置を記録した。採取した子実体は、そのDNAについて相同性検索による種の同定とフラグメント解析を行った。

その結果、相同性検索によってほとんどの菌種を同定することができた。また、ほとんどの菌種についてITS3-4のフラグメントサイズが種内で共通すること、また種間で異なることが示された。一方、Russula属の3種については、フラグメントサイズが同程度になることが示され、近縁な菌種ではフラグメントサイズが類似することが示唆された。さらに、ITS3-4のフラグメントサイズが同程度であったRussula属3種について、制限酵素処理を行ったところ、制限酵素処理断片のフラグメントサイズは3種で異なることが明らかとなった。したがって、ITS3-4と制限酵素処理断片のフラグメントサイズによって、菌種の分類ができることが示唆された。さらに、DNA解析で同定された菌種の発生位置から、林分の発達にともなって、各菌種の分布パターンが変化していることが明らかにされた。


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