| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-266

瀬戸内海島嶼の景観構造に及ぼした架橋工事の影響について――瀬戸大橋と櫃石島と与島の場合

張 可(横浜国立大学大学院・環境情報学府)

本研究では瀬戸大橋の架かる櫃石島・岩黒島・与島における架橋工事に実施前後の植生景観(Vegetation Landscape)の変化と前記3島に隣接するが、架橋工事が行われなかった本島・牛島のそれとの違いの有無を明らかにするため、景観生態学的調査を行った。さらに本研究では、その解析結果に基づいて、人間の開発活動が自然環境にどのように、どの程度の影響を与えるのか(環境影響評価:環境アセスメントEnvironmental Assessmentの一部として)を解析、評価する。本研究の成果は、将来、中国で建設が計画されている「跨渤海大橋」に対する環境影響評価に資するものと期待できる。また、これからの知見は人間と自然環境との共存、持続可能な発展及び生態学的土地利用のための有効な方策を策定するうえで重要な指針となる。

本研究の研究方法は現地で植物社会学(Braun-Blanquet,1964)と景観生態学に基づいての調査方法で植生調査を行った。次に植生調査資料を解析し、各種植生単位を抽出した。識別した植生単位を用いて、調査地域の現存植生図を作成した。さらに、過去の空中写真を判読し、各島の過去の植生図を作成し、両者を比較した。植生図の比較では、GISを用いて植生景観パターンの周囲、長さ及び面積の変化を算出し、そこで得た数値データを用いて統計、解析を行った。以上の解析結果から、架橋工事が島の植生景観に与えた影響の程度を明らかにした。

今回行った現地植生調査から、主な植生単位として、自然植生では、ウバメガシ―トベラ群集、各種海浜植物群落、塩沼地植生が、代償植生として、松枯で劣化状態にあるコハノミツバツツジ―アカマツ群集、クヌギ群落、ダンチク植分などが識別された。瀬戸大橋の架かる、架からないにかかわらず、いずれの島においても自然植生の分布は小面積であり、大部分は代償植生で占められていた。


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