| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-272

ラジコンヘリによる高解像度リモートセンシングと湿地性草本植物の個体レベル種判別への適用

*小熊宏之(国環研),宇佐美昌樹((株)情報科学テクノシステム),島崎彦人,石濱史子(国環研)

草本植生を対象とし、撮影画像から直接的に植生種の判読を可能とする高解像度のラジコン空撮システムを開発した。従来のラジコンヘリ等による空撮との相違点は、同時搭載のGPSにより撮影画像に地理座標を持たせオルソ画像を作成出来るほか、撮影画像のオーバーラップ部分をデジタル立体視することで草本群落の高さ情報の抽出が可能なことである。システムの実証実験として2009年7月9日に渡良瀬遊水地における低層湿原の250m×300mを空中撮影した。ラジコンヘリにはAscending Technologies 社のFALCON8を用いた。同ヘリは予め飛行コースと撮影点を設定することで完全な自律飛行・撮影が可能である。FALCON8の対地高度を30mとし、搭載したデジタルカメラRicoh GX200のレンズ焦点距離を24mmで最大画素の撮影に設定した場合、計算上約7mmの地上解像度を得る。この条件にて約300シーンを撮影した。低層湿原のオギとヨシを主体とした群落に適用した結果、葉の形状と色からこれらの2種を目視で判読可能であることを確認した。地理座標が既知の地上検証点との比較により、撮影画像の地理座標は約50cm程度の精度を持つことも確認した。システム全体は軽量かつ折りたたみ可能であり、調査フィールドへの搬入も容易である。踏査による植生調査が困難な高層湿原などへの適用のほか、撮影場所の再現性も確保できるため、長期変動の把握を目的としたモニタリングへの利用も期待できる。今後の課題としては、立体視処理による草本群落の高さ情報の抽出と、広範囲の植生種をマッピングするための画像解析手法の検討が挙げられる。


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