| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-273

高分解能衛星画像を用いたアンコール遺跡の優占樹種判別

*富田瑞樹(東京情報大)・平吹喜彦(東北学院大)・荒木祐二(東大)・塚脇真二(金沢大)・ボラ リー(APSARA)・パオ ハン(APSARA)

カンボジア内陸低海抜域の自然植生がわずかに残存するアンコール遺跡群のひとつ,プラカン寺院における樹木群集の種組成・サイズ構造・空間分布と,高分解能衛星画像から得られた樹冠の輝度値統計量とを比較し,衛星画像を用いた樹種判別を試みた.

プラカン寺院内に14.26haの調査区を設置し,2007年から2008年にかけて毎木調査を実施した.胸高直径40cm以上の樹木について幹位置・種名・DBH・樹高・最下生枝高・樹冠幅を記録した.QuickBird衛星画像(2004年1月6日撮影)上に幹位置および樹冠を重ね,種ごとの輝度値統計量を取得した.樹種判別の参照データとするために,携帯型分光放射計MS-720を用いて優占種3種の本葉の反射率を測定した.

21科45 種が出現し,胸高断面積合計は290.5m2であった.直径階分布は逆J字型を示し,60-80cmのサイズクラスで個体数が急減することが特徴的であった.空間分布では,Dipterocarpus alatusは遺跡に至る回廊周辺に分布する一方,Lagerstroemia calyculataD. alatusに比べてより明るい環境の遺跡中央周辺部に分布していた.拡張相対成長式を用いて比較したところ,D. alatusに比べてL. calyculataTetrameles nudifloraは先駆的な特徴を示した.また,本葉の反射率を比較すると,D. alatusが全ての波長域で高い反射率を示した一方,L. calyculataT. nudifloraの間に大きな差はなかった.衛星画像を用いた樹種判別では,近赤外域の最大値が優占樹種の抽出に有効であることが示唆された.


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