| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-284

ササ刈り後の管理による牧草原植生再生に関する研究

*児玉卓也,小林達明(千葉大・園芸)

江戸時代まで、千葉県北部には牧草原が広がっていたが、その後の土地利用の変化によってアズマネザサ(Pleioblastus chino)などが繁茂し、草原としての種組成はほぼ失われている。本研究は、そのようなササ群落を里山二次草原に再生させるために、ササ群落の埋土種子組成と、ササ刈り及び複数の管理条件下でササ刈り後の植物相の変化を調査した。

調査地は,かつて牧草原が存在していたとされる柏市こんぶくろ池周辺のアズマネザサが優占する草地である。まず、調査地の埋土種子組成を把握するため、ササ群落の土壌を採集し、発芽実験を行った。同時に、調査地現地において、アズマネザサの刈り取り及び植物相の経時変化の調査を行った。加えて、本試験では、落ち葉掻きの有無による試験区内の草原性植物の発生状況の比較を行った。

試験の結果、埋土種子発芽実験においては43種、調査地現地の試験区においては75種の植物種が確認された。そのうち、二次草原の典型的な植物種は、埋土種子発芽実験では10種、現地のササ刈りを行わない対照試験区では1種、現地ササ刈り試験区では19種が確認された。草原性植物の発芽はササ刈り後2年目で急激に増加し、3年目以降も緩やかに増加していくということがわかった。また、ササ刈り後に落ち葉掻きを行った試験区では、草原性植物の種数、被度共に増加する傾向がみられた。

以上の結果から、アズマネザサを刈り取ることによって埋土種子の発芽を促し、牧草原を再生することが可能であることがわかった。また、ササ刈りによって出現した植物種のうち、約70%が埋土種子由来であったことから、埋土種子がササ刈り後に成立する植物相へ及ぼす影響は、非常に大きいということがいえる。一方で、ササ刈り後の落ち葉掻きは、草原性植物の埋土種子の発芽を促進させる効果があるということがわかった。


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