| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-288

長野県伊那盆地における流域単位での水生植物の分布と立地環境条件との関係

*御池俊輔(信大院・農),大窪久美子(信大・農)

二次的自然である水田や溜池,水路は水生植物の生育地として重要であるが,近年これらの種の減少や絶滅が問題となっている。これらの水域は広域的なネットワークを形成しており,水生植物の生育もその相互関係の中で成立していると考えられる。そこで本研究では同水源利用地域の小流域を一単位として,水生植物の分布と立地環境,管理条件等との関係性を明らかにすることを目的とした。

調査は長野県伊那盆地天竜川水系にて南箕輪村及び伊那市(竜東,竜西),駒ヶ根市の3箇所で実施した。標高差は各々100mおよび220m,290mである。河川および溜池,水田,水路(用水路,排水路),養魚池等を調査区画とし、溜池と水田は各々1池,1筆を1区画,水路は合流点や構造を一区切りとした区画毎に調査した。水生植物の分布状況について,区画全体での被度,1m×1m仮想方形区における被度(Braun-blanquet,1964)を夏季と秋季に測定した(伊那市東岸,駒ヶ根市2ヶ所では秋季のみ)。環境要因として,水温およびpH,EC,底質,構造,周辺土地利用について測定,記録した。各調査区画の設定は,その地域の土地利用割合を反映するよう調査数を調整し,できるだけ一つの水系に沿って設定した。

その結果,夏季1地区46区画中27区画にて51種,秋季3地区76区画中22区画にて24種を確認した。水生植物の分布パターンは主に土地利用によって異なり,標高による傾向はみられなかった。土地利用では宅地,市街地に接する区画より水田に接する区画に多くの水生植物が出現していた。また,標高差10m以内の距離の近い区画で共通する出現種が多かった。そのため、水生植物は土地利用単位,またそれより小さいスケールで分布が規定される可能性が示唆された。本発表では人為的影響として各区画の管理法についても検討し報告する。


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