| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-295

河川底生動物群集からみた河川景観の構造と機能−撹乱と季節変化に着目して−

*末吉正尚(北大院農),中村太士(北大院農)

河川・氾濫原では、様々な環境傾度と撹乱によって形成される生息環境の時空間的な変化が、高い生物多様性を維持する要因となっている。多様な環境は、生物にとって生息場として機能するだけではなく、撹乱からの避難場など様々な機能をもつ。特に河川生物にとって大きな撹乱となる大規模出水中の生息場・避難場機能を評価することは豊富で多様な生物群集を保全・管理していく上で必要不可欠である。

河川底生動物は流水域から止水域まで河川・氾濫原のあらゆる環境に生息しており、河川景観がもつ機能を評価する上で非常に有用である。底生動物群集は瀬や淵といったユニットスケールで明確に異なることが分かっている。

本研究ではユニットスケールで河川(一部氾濫原も含む)景観を視覚的に区分し、各景観要素がもつ多面的機能を底生動物群集の動態から評価した。特に融雪出水に焦点を当て、出水による河川景観の変化とそれに伴う機能の変化を調査した。

その結果、出水前の平水時は各景観要素で群集構造が明確に異なった。しかし、出水中には本流の主要素であった瀬や淵などのユニットが均質化し、それに伴う物理環境・群集構造の類似化がみられた。上記景観要素では個体の減少も大きかったが、他の景観要素では個体の減少が小さい避難場も存在した。また出水中には、陸域であった環境に新たな水域が形成され、個体の移入が確認された。以上の結果からユニットスケールでの景観要素は、底生動物群集にとって異なる生息場として機能し、要素ごとに撹乱の影響も異なることが分かった。特に撹乱の影響の小さい景観要素は個体群を維持していく上で重要と考えられた。


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