| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-296

ナミビア半乾燥地域におけるヤギの日帰り放牧の季節による差異と植生との関係

*手代木功基(京都大・AA研),齋藤仁(首都大・地理環境)

南部アフリカ,ナミビアの半乾燥地域では,年変動が大きく不確実な降水のもとで,植生に依存した牧畜が地域住民の重要な生業となっている.近年,本地域の牧畜は自給を目的としたものから現金収入を目指した形へと変化しており,それに伴ない放牧の規模・形態も変化してきた.したがって今後の適正な放牧地利用のためにも,放牧ルートや家畜の採食行動及び植生構造といった基礎的な情報を定量的に明らかにする必要がある.そこで本研究では,定住して家畜を飼養している人々が行っているヤギの日帰り放牧のルートに着目して,その季節性と植生との関係について検討する.

調査は2008年12月から翌1月(雨季の初め)と2009年6月から8月(乾季)に行った.ヤギの放牧ルートは,小型GPSロガーを取り付けた首輪(GPS首輪)を特定のヤギに装着して調査期間中記録した.また期間中のそれぞれ5日間は採食物を追跡調査によって記載した.植生調査は,250m間隔のグリッドをGPSを用いて作成し,その格子点上に調査区を設置して出現種の記載と出現個体数の計測を行った.これらの現地データとDEMデータ等をもとに,GISソフトを用いて日帰り放牧の季節による差異やその要因について解析した.

調査の結果,ヤギの放牧ルートは雨季と乾季で傾向が異なり,場所ごとの利用頻度には季節差が存在していることが明らかとなった.植生との関係について検討すると,ヤギにとって重要な採食種(木本)が季節ごとに数種存在しており,その分布が放牧ルートの季節による差異と関係していることが考えられる.これはヤギの採食物の追跡調査結果からも支持された.したがって調査地域のヤギ放牧のルートは,季節によって異なる重要な採食植物種の分布と生育密度が影響していると言える.


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