| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-318

現地調査とリモートセンシングを合わせた三宅島2000年噴火の植生被害とその後の回復過程の把握

*宮本雅人(筑波大・生命環境),上條隆志(筑波大・生命環境),高橋俊守(宇都宮大・農学部)

三宅島は2000年に7月に大噴火、植生が広範囲にわたり破壊された。裸地化した地表面では容易に土石流が発生し、緑化による植生回復が重要な課題となっている。適切な緑化を行うには植生回復の現況把握が必要である。

2000年噴火後の植生の現況把握の研究は現地調査に加え、衛星画像を使用した広域の分析結果が報告されている(高橋ほか2008)。だが地上の植生と衛星画像の関係については十分な検討がされていない。そこで本研究では、衛星リモートセンシングと現地調査を合わせて、今まで不十分だった地上植生と衛星画像との対応関係の把握を目的とする。衛星データについては高橋ら(2008)の噴火後2時期のNDVI最大値を用いた。この値は、Terra/ASTERの衛星画像データから求めたもので、2001年〜2002年、2003年〜2005年に分けて各期間のNDVIの最大値を求めたものである。現地調査データについては、噴火直後から継続調査(植物社会学的方法による植生調査と毎木調査)が行われている11ケ所の面積100m2の固定調査区のものを用いた。2001年〜2002年、2003年〜2005年に分け、各期間内の平均植被率、平均出現種数を解析に用いた。

NDVI最大値と平均植被率との関係をみると、草本層・低木層・亜高木層・高木層の全階層の平均植被率の合計値との間に有意な正の相関関係が見られた(相関係数0.841, p<0.01)。これより、噴火被害林でも、一定期間内のNDVI最大値は階層構造を持つ森林全体の植被率の評価に有効と思われる。一方、NDVI最大値と平均出現種数との関係では、全階層を合わせた平均出現種数との間に有意な関係が見られなかった。これは、火山ガスによる植物の枯死と耐性のある種の侵入の同時進行が原因であり、NDVIと種数との関係が単純ではないと考えられる。


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