| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-333

アズマネザサの優占した耕作放棄地における在来木本6種の定着阻害要因の検証

徳岡良則(農環研,広大院・国際協力),大東健太郎(農環研),中越信和(広大院・国際協力)

農地生態系における生物相回復過程の推定や農地の効率的な利用法の検討には、耕作放棄地に成立する植物群落の特性把握が重要である。本研究では関東東部に広く見られるアズマネザサが優占した植物群落について樹木実生の定着制限の有無を試験検証した。

試験は茨城県つくば市内の15年間放棄された元畑地圃場で行った。圃場内を4ブロックに区分し、各ブロック内に植生刈取の有無、動物侵入軽減網の有無、リター被覆の有無(二次要因)を無作為配置し分割実験を行った。2009年3月中旬に各処理区にアカマツ、エノキ、ムクノキ、コナラ、シラカシ、スダジイを播種し、発芽個体の標識とその生残・死亡の調査を1カ月毎に10月末まで継続した。

各種の標識個体を対象にカプラン・マイヤー法で生残曲線を処理毎に推定した。また播種後秋期までの実生発生・生残への処理影響を評価するため、各種の10月末時の生残個体割合を応答変数(確率分布には二項分布を仮定)、三処理要因とそれらの二次の交互作用を説明変数とし、一般化線型混合モデルにより仮説検定を行った。

推定された生残曲線ではアカマツ、エノキ、ムクノキ、コナラは非刈取区では観察期間中に個体数は少なくとも半減した。シラカシ、スダジイは発芽後の生残率は処理に関係なく概ね6割以上と推定された。しかし2種は非刈取・網無区では生残個体割合が著しく低かった。これは発芽前後の動物影響によるものと思われる。リター処理の影響は刈取や網処理の有無に応じて変化し、正負の効果が種毎に異なって検出された。自然条件下と類似した植生非刈取・網無・リター被覆区では生残個体は全種でほとんどなくほぼ全滅していた。このため対象群落内ではササ等との競合、動物影響、一部はリター被覆により対象木本の初期定着が著しく制限を受けると考えられる。


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