| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-344

枯死時期と環境条件の違いが倒木上のエゾマツ・トドマツの稚樹密度に及ぼす効果

*岡田桃子,梶幹男(東大・農)

倒木更新は、北海道の主要針葉樹エゾマツとトドマツの主な更新様式であることが知られるが、倒木が枯死後に更新母材として機能するまでにかかる期間(経過期間)が更新に及ぼす影響については不明な点が多い。本研究では、5年間隔で毎木調査が行われている東京大学北海道演習林の前山大型試験地の5ha調査地において、個体識別タグが付いていた71本の倒木の枯死時期を特定し、応答変数をエゾマツ・トドマツの稚樹密度、説明変数を倒木の経過年数と環境条件として、一般化線形モデルで解析を行った。AICモデル選択を行った結果、トドマツでは倒木が古く、コケ被度が高く、夏期・冬期の開空度が大きく、倒木周囲の同種個体のBA合計が大きいほど、密度が高くなること、エゾマツでは、上記条件に加えて倒木硬度が低いほど、密度が高くなることが示された。さらに本研究では、各倒木上のトドマツとエゾマツ稚樹の最大齢を応答変数、倒木の経過年数と環境条件を説明変数としたモデルを構築し、パラメータ推定を行った。その結果、エゾマツ最大齢=exp(-1.229+0.121×枯死後経過年数+0.158×表面積-0.001×BA合計)、トドマツ最大齢=exp(-2.671+0.126×枯死後経過年数+0.151×表面積+0.002×BA合計+0.019×水文蓄積)、という関係式が得られた。10000回繰り返しのブートストラップ法により、最大齢を0としたときの経過年数(すなわち、倒木が枯死後に倒木更新の母材となるまでの期間)の平均値と95%信頼区間を算出した結果、エゾマツで平均13.3年(6.3〜19.4年:95%信頼区間)、トドマツで平均16.9年(9.5〜24.3年)と推定された。以上のことから、倒木は枯死後10数年で更新の母材として機能し始めること、エゾマツの方がトドマツよりも枯死後早い段階の倒木上で更新を行うことが示唆された。


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