| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-007

森林棲齧歯類3種におけるタンニン摂取量推定法の開発 ―糞中プロリン含有率を指標として― 

*島田卓哉(森林総研・東北), 西井絵里子(北大・環境科学院), 齊藤隆(北大・FSC)

【目的】堅果類は森林性齧歯類の重要な資源であるが,ある種の堅果は被食防御物質タンニンを多量に含むことが知られている.演者らは近年,アカネズミが唾液中のプロリンリッチプロテインとタンナーゼ産生腸内細菌の働きを介した馴化作用によってタンニンの有害な影響を克服していることを明らかにした.タンニンに対する馴化の詳細な過程を明らかにするためには,野外でのタンニン摂取量の推移を解明する必要がある.しかし,夜行性小型哺乳類の場合,直接観察や胃内容物分析によってこの問題を解決することは難しい.そこで,糞に含まれる化学成分を手がかりとして,小型哺乳類に適したタンニン摂取量の評価手法の開発を行った.

【方法】飼育下でアカネズミ,ヒメネズミ,エゾヤチネズミにタンニン含有率の異なる飼料を供餌し,糞中のタンニン含有率(radial diffusion法),フェノール含有率(Price-Butler法)そしてアミノ酸の1種であるプロリン含有率(塩酸加水分解法)を測定した.

【結果】アカネズミとヒメネズミに関しては,プロリン含有率がタンニン摂取量と高い相関を持つことが明らかになったが(R2 = 0.79-0.89),他の成分は有意な相関を示さなかった.摂取したタンニンの大半がプロリンリッチプロテインと結合し糞へと排泄されたため,このような結果になったと考えられる.一方,エゾヤチネズミに関してはこのような関係は認めらず,糞中プロリン含有率も他種に比べて低い傾向があった.エゾヤチネズミにおいては,プロリンリッチプロテインが充分に分泌されていない可能性がある.

【結語】アカネズミとヒメネズミに関しては,糞中プロリン含有率を用いて野外でのタンニン摂取量を定量的に評価することが可能となった.野外個体群への適用についても報告する予定である.


日本生態学会