| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-029

種子-葉利用型植食昆虫の豊凶による季節消長の変化

*藤田真梨子,前藤 薫(神戸大・農),松井 淳(奈教大・生物),寺川眞理(京大・理),駒井古実(大芸大・環),湯本貴和(地球研)

捕食者飽食仮説が成り立つための前提として種子食昆虫が餌資源を種子に依存していることがあげられるが、ヤマモモ Myrica rubra の種子捕食者であるヤマモモキバガ Thiotricha pancratiastis は非果実期には新葉を利用して年多化の生活史をもつことがわかっている。このような「種子-葉利用型」植食昆虫の個体群動態には結実量と展葉パターンの両方が影響すると推察される。本研究では、ヤマモモキバガの季節消長と個体数の年変動に影響を及ぼす要因を明らかにするため、ヤマモモの豊作年と凶作年で結実量と展葉パターンおよびヤマモモキバガ終齢幼虫の落下密度を比較した。

ヤマモモは雌雄異株の常緑高木で液果を実らせる。2008年と2009年の2〜12月に屋久島半山地域のヤマモモ樹冠下にリタートラップを設置し、落下果実と蛹化のために落下したヤマモモキバガの終齢幼虫を計数した。展葉パターンを調べるため、ヤマモモのシュート上の果実数と新葉数を2ヵ月に一度記録した。

2008年と2009年の落下果実数はそれぞれ856.7個/m2、1267.1個/m2であった。その年豊作であった個体では初夏の展葉が少なく、夏以降に再度少量の展葉を行うものが多かった。一方凶作であった個体と雄個体では初夏に一度に展葉する傾向がみられた。ヤマモモキバガの個体数は、凶作年の2008年では春に出現する1世代目の果実食幼虫が少なく、葉を利用する2世代目で個体数の回復がみられた。豊作年の2009年では果実食幼虫数は凶作年の約5倍に達し、2世代目以降の葉食幼虫は減少した。果実の供給量は年や季節により変動するが、それをうまく利用できた場合は個体数が急増するという利点があると考えられる。


日本生態学会