| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-033

オオバギ属アリ植物上の植食者群集

*清水加耶(京大・人環),市岡孝朗(京大・人環),乾陽子(大教大・教養),大久保忠浩(関大一高)

アリに巣場所を提供し、共生アリから被食防衛効果を得る植物は、アリ植物と呼ばれる。アリ植物の対植食者戦略は、共生アリによるもの(アリ防衛)とそれ以外の化学的あるいは物理的な手段による非アリ防衛に分けられる。東南アジアの熱帯地域を中心に分布するトウダイグサ科オオバギ属(Macaranga)には、多くのアリ植物種が含まれる。非アリ植物種を含め、オオバギ属内にはアリとの共生関係のあり方に種間変異のあることが知られており、アリ防衛と非アリ防衛の強度は逆相関の関係にあることが明らかになっている(Nomura et al. 2000)。すなわち、アリ防衛への依存度が高いオオバギ種ほど、非アリ防衛が弱くなる傾向がある。このようにオオバギ属には対植食者戦略の異なる種が存在している。したがって、複数のオオバギ種が同所的に生育する場所では、植食性昆虫に対して多様なニッチが提供されていると考えられる。

本研究は、アリ‐オオバギ共生系に見られる対植食者戦略の種間変異が植食者の寄主植物利用にもたらす影響を実証的に検証することを目的とした。マレーシア・サラワク州の熱帯低地林に生育するオオバギ5種について、植食者から食害を受けている割合を調べるとともに、植食性昆虫の採集を行った。その結果、食害率や、オオバギ上で昆虫が採集される頻度、出現する植食者の種構成は、オオバギの種によって異なることが明らかになった。食害が最も少なかったのは、アリ防衛に依存しているオオバギ種であった。次いで、アリ防衛より非アリ防衛が強く働いているオオバギ種でも食害が抑えられており、アリ防衛・非アリ防衛が中間的であるオオバギ種が、もっとも強い食害を受けていた。講演では、これらの結果をもとに、対植食者戦略の種間変異と植食者相の種間変異および食害度の違いの関係について考察する。


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