| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-037

スペシャリスト植食性昆虫の多様化は寄主植物の影響を受けるのか?

*加藤俊英(東大・院・総合文化), Arturo Bonet(Institute de Ecologia, Mexico), 神保宇嗣(東大・院・総合文化), 伊藤元己(東大・院・総合文化), 嶋田正和(東大・院・総合文化)

植食性昆虫は極めて種多様性が高く、しかもその70%以上は近縁な数種の植物のみを利用することが経験的に知られている。この二つの特徴は、Ehrlich and Raven (1964)が二次代謝産物を介した植物−昆虫間の相互の多様化について言及して以来、しばしば関連付けられて議論されてきた。しかしながら、特定の植食性昆虫系統群全体についての網羅的な実証研究はあまり多くない。

本研究では、多様性が高く、一般的に高い特異性を示すが、広範な植物を利用するジェネラリストも知られている新大陸産のマメゾウムシAcanthoscelidini族に着目し、植食性昆虫の多様化と寄主特異性の増大について分子系統解析に基づいた解析を行った。

8属53種のAcanthoscelidini族マメゾウムシについて、16−12SrRNAの一部配列によって得られた分子系統に基づくPTP検定によって、各マメゾウムシが利用する植物の分類群と、それら寄主植物の既知の二次代謝産物についての系統保存性を評価した。その結果、L-カナバニンなどの寄主植物の二次代謝産物に対する強い系統保存性が見られた。さらにFaithのPhylogenetic diversity indexを用いてマメゾウムシ各種の寄主利用の広さを定量化し、各クレードにおける推定種数と寄主利用の広さに相関が見られるかを検証した。

得られた結果から、本族において多様化と寄主特異性の進化は共に寄主植物の二次代謝産物によって説明可能であり、寄主シフトとそれに続くスペシャリスト化によってマメゾウムシが多様化したことが示唆された。


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