| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-041

九州産ヒメオサムシの体サイズにおける形質置換パターンの検出

*奥崎穣(京大・理),曽田貞滋(京大・理)

近縁な2種が異所的な地域よりも同所的な地域でより大きな形態差を示すことを形質置換あるいは形質解放と言う。この形態の地理的パターンは、資源競争あるいは繁殖干渉を減少させる進化的プロセスから生じると考えられてきた。しかし、形態の変化は、近縁種との相互作用だけでなく環境適応からも生じうる。そのため、形質置換パターンを検出する際には、環境の効果を除いたうえで形態を地域間で比較する必要がある。九州には2種のオオオサムシ亜属、ヒメオサムシとオオオサムシが分布しており、小型種であるヒメオサムシは本土と離島を含めた九州全域に、大型種のオオオサムシは九州本土の山間部と一部の離島に分布する。そして、ヒメオサムシは単独分布する離島や平野部で大型化することが知られており、形質解放が生じている可能性がある。しかし、本亜属の体サイズは年平均気温と相関するため、このパターンは局所適応の結果から生じている可能性もある。そこで、九州各地からオオオサムシ亜属を採集し、体サイズと年平均気温、ハビタット(本土、島)、近縁種の有無との関係を調べた。その結果、ヒメオサムシは温暖な地域または離島にて大型化する傾向が見られた。さらにこれらの環境要因とは独立して、オオオサムシがいない地域で大型化しており、本種は形質置換パターンを示すことが明らかとなった。本亜属においては、体サイズが資源利用に影響しないこと、また体サイズの似た種間で交雑が起こりやすいことが明らかとなっている。そのため、同所的地域での2種間の体サイズ差は生殖隔離として維持されており、ヒメオサムシの単独分布域での大型化はオオオサムシとの繁殖干渉から解放された後の環境適応の結果、すなわち生殖的形質解放であると推測される。今後、体サイズがもたらす生殖隔離の効果、単独分布域で大型化するプロセス、体サイズ決定における遺伝的基盤について、さらなる調査が必要である。


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