| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-049

カタツムリ(Euhadra peliomphala )のヘビ擬態

*葛西直子,長谷川雅美(東邦大・理),黒住耐二(千葉県立中央博),関啓一(信州大)

陸産貝類であるEuhadra属は、韓国、九州から北海道にかけて生息する。ミスジマイマイ(Euhadra peliomphala)は関東地方に分布し、このうち伊豆半島南端と伊豆諸島の大島、利島、式根島、神津島、新島に分布するものは亜種シモダマイマイ(Euhadra peliomphala simodae)とされている。ミトコンドリアの分子系統解析により、関東地方のEuhadra peliomphalaはいくつかのクレードに分かれ、各ハプロタイプは地理的な分布と対応する。

Euhadra peliomphalaは殻彩に多型を有している。シモダマイマイの殻彩には大別して3タイプの色彩型がみられ、伊豆半島南端と伊豆諸島では分布する色彩タイプが異なるだけでなく、島間で優占する色彩タイプが異なっている。さらに,本土から島嶼への移入に伴う遺伝的多様性の減少にもかかわらず、島嶼個体群の殻彩の多様性は増加している(Hayashi & Chiba, 2003)。伊豆諸島のシモダマイマイ個体群の殻彩多型の維持に関わるプロセスについての仮説を立て、検証を行っている。

現在の伊豆半島は、50~70万年前に伊豆・小笠原弧をのせたフィリピン海プレートの北上によって古伊豆諸島の一部が本州に衝突して形成された。シモダマイマイが古伊豆諸島に元々分布していたとすれば、それがどこからどのように分散してきたのか、シモダマイマイの祖先種が本土に分布するEuhadraのどの種群にあたるかということについて明らかにする必要がある。

シモダマイマイが本土に生息するEuhadra属のどの種群と最も近縁か、mtDNAを用いた系統解析によって明らかにし、その祖先種と分散過程について考察し、今回はその経過について発表する。


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