| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-105

種多様性と撹乱間に見られる単峰形パターンは何によってもたらされるのか?

*森照貴(北大・環境科学), 齊藤隆(北大・FSC)

洪水などの撹乱は多様性に影響を及ぼす重要な要因とされてきたが,撹乱と多様性の関係性は様々であり,主に単峰形と負のパターンが報告されてきた.本研究では,群集レベルでの密度依存的な競争を考慮することにより,撹乱と多様性の関係における単峰形と負のパターンを統一的に説明できることを提示した.強い撹乱下では群集密度が低いため,多様性も低くなる.一方,弱い撹乱下では,競争があれば多様性は低下するため単峰形のパターンとなるが,競争がなければ多様性は低下しないため負のパターンになると考えられる.

北海道沿岸域を流れる30の山地小河川で採取された藻類食者・腐植食者ギルドにおいて多様性と撹乱の関係性を分析した.その結果,藻類食者は単峰形を示し,腐植食者は負のパターンを示した.いずれのギルドも群集密度は撹乱が弱くなるほど上昇していた.一方,弱い撹乱下における高い群集密度レベルで藻類食者群集の多様性は低下していたが,腐植食者群集では低下していなかった.競争の存在を示すC-score分析の結果,藻類食者でのみ競争が検出され,競争は弱い撹乱下での高い群集密度で顕在化することが明らかになった.これらの結果から,群集レベルの密度依存的な競争によって撹乱と多様性のパターンの変異を説明できると考えられた.


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