| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-170

異なる遊牧システムの境界の位置は何で決まるのか

*岡安智生, *大黒俊哉, **ウンダルマ・ジャムサラン, *武内和彦 *東大・農 *モンゴル国立農業大学

非平衡草原は降水の強い変動に伴う不均一な生物生産、草原の状態の動物密度への非依存性、遊牧民のフレキシブルな草原管理手法によって特徴付けられている。現在では年間降水量の変動係数33%が、平衡環境と非平衡環境を分けると広く認識されている。これは草原の状態の動物密度への依存性が反映された基準である。しかしながら、このような依存性の差異を表す境界線と、管理手法の境界線が一致する論理的な根拠はない。そこで、動物の維持に必要な最低限のバイオマスとバイオマス分布を基にして、管理手法を分ける仮説モデルを用いて、モンゴル国を対象に管理手法の分布図を作成した。その結果、モンゴル東部では両境界線はよく一致したものの、西部では異なった。多くの研究が非平衡草原環境を議論する際、依存性や管理手法を同時に調査しておらず、むしろ複数の非平衡草原の特徴は暗に共起すると仮定している傾向がある。本研究の結果は、このような仮定に疑問を投げかけ、非平衡草原の複数の特徴の相互作用の解明を促すものである。


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