| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-178

国道51号線沿いにおける遺伝子組換えセイヨウアブラナの逸出状況 − 2009年度までの調査結果報告 −

*西沢 徹,中嶋信美,玉置雅紀,青野光子,久保明弘,佐治 光(国立環境研)

国道51号線は,千葉県千葉市から茨城県水戸市へ至る一般国道で,茨城県の鹿島港で陸揚げされた輸入ナタネ(セイヨウアブラナBrassica napusの種子)を京葉地域へ陸上輸送する主要ルートの一つと考えられる。国道51号線沿いでは,路側帯のブロックの隙間や歩道のアスファルトの隙間などにセイヨウアブラナが生育しており,これらには除草剤耐性形質を付与された遺伝子組換え(GM)個体も含まれている。日本で使用されるナタネのほとんどは輸入に依存しており,鹿島港は国内の主要なナタネ陸揚げ港の1つである。国道51号線沿いに生育しているセイヨウアブラナは,鹿島港で陸揚げされたナタネが輸送中にこぼれ落ちて発芽したものと考えられている。茨城県稲敷市から千葉県香取市を経由して千葉県成田市までの国道51号線の約20km区間において,2005年度からGMセイヨウアブラナの逸出状況を継続して調査した結果,GM個体数は減少傾向が続いていたが,2009年度は再び増加した。また,生育していたセイヨウアブラナの全個体数に占めるGM個体の割合も調査を開始した2005年度以降でもっとも高かった。日本に輸入されているナタネは,カナダ産とオーストラリア産がその大部分を占めている。カナダから輸入されるナタネの60%程度は既にGMであると推定されている他,従来は非組換え体の栽培国であったオーストラリアでもGMナタネへの転換の動きがあり,日本国内へのGMナタネの侵入圧は今後も増加することが考えられる。現状では,国道51号線周辺においてはGM個体だけからなる大規模な個体群や分布域の拡大は認められていないが,今後も継続して監視する必要がある。


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