| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-181

農業被害の軽減による、農村景観の保全

*山崎亙(広島大・院・国際協力),渡辺麻気(広島大・総科),大丸秀士(広島市安佐動物公園),中越信和(広島大・院・国際協力)

近年、新・生物多様性国家戦略(2002.3月)が打ち出され、21世紀環境立国戦略(2007.6月)や第三次生物多様性国家戦略(2007.11月)が次々に打ち出され生物多様性や環境立国など里地里山を見直す機運が高まっている。さて、1950〜1960年代に行われたエネルギー転換や工業化によって生活様式は大きく様変わりし、日本の生命線ともいえる農業は疲弊し里地里山という人間管理下で育まれてきた生物が絶滅危惧種の約5割に達するという状況下にある。そこで、里地里山保全再生モデル事業(2004〜2007年)が4地域5地区で実施されるなか、全国の里地里山では高齢化・少子化・後継者不足に鳥獣害が加わり、里地里山では、集落崩壊の危機がいたるところで起こりつつある。

筆者らは、里地里山保全再生モデル事業や鳥獣害防止研究が多くの国家機関・大学・NPOなどで研究される中、広島県安芸太田町でダム湖水のエネルギーやダム建設による移転で出来た新たな集落と鳥獣害に苦しめられ、放棄草地に植林されたスギ林に残る大規模希少種群落のある集落を実験地として「農業被害の軽減と農村景観の保全」を目的とした保全実験を昨年から行っている。

鳥獣害などで苦しめられる農作物耕作意欲や後継者、農業を続けるうえでの解決策などアンケート調査(208世帯)を実施した結果、農業を続けるうえでの解決策としては、「鳥獣害問題解決」が約3割、「農家の所得向上問題」が約3割、「後継者と働く場問題」と解答した世帯が約2割あり、兼業農家やその集落の存続課題は一つではなく、複数の課題を解決しなければならないことが示唆された。


日本生態学会