| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-212

調整池に繁茂する外来スイレンのソウギョによる抑制

*宮野晃寿(筑波大・生物資源), 藤岡正博, 遠藤好和, 佐藤美穂(筑波大・農林技術センター)

繁茂して問題となる水生植物の多くは、本来の自生地の外に運ばれ野生化した外来種である。筑波大学内の調整池でも外来スイレンの繁茂が原因となって悪臭や溶存酸素(DO)濃度の低下が発生している。水生植物を駆除する方法の一つとして植食性動物を用いた生物的防除が挙げられる。特にコイ科植食魚のソウギョは水草駆除において各地で使われている。ソウギョの利点は、長期的効果・低コスト・個体群管理の容易性などであるが、外来種なので慎重な取り扱いが求められる。また、ソウギョはスイレンを好まないという報告もある。そこで本研究では、ソウギョによって、スイレンの繁茂を抑制できるかを調べた。

スイレンの繁茂する調整池の一部500m²を網で完全に囲って調査地とし、さらに内部に網で囲った3m四方のソウギョ排除区と囲いの無いソウギョ採食区を6対設けた。2009年5月に、体長20〜60cmのソウギョ36匹を放流し、9月まで定期的に排除区と採食区を上から撮影し、植被率を写真判定するとともにDO濃度を調べた。また、調査最終日にスイレンの葉を刈り取り、乾燥重量を測定した。解析の結果、有意ではなかったが最終日の植被率(%)は排除区に対して採食区で小さかった(91 ± 2 vs. 65 ± 29)。乾燥重量は排除区で採食区より多かった。乾燥重量に差があったが植被率に有意差が無かったのは、排除区では葉が水面を覆った後も立体的に繁茂したためと考えられる。DO濃度が増加すると植被率は減少し、排除区と採食区の間には差はなかった。今回の密度(7匹/100m²)と期間(4ヵ月)ではソウギョだけでスイレンが水面を覆うことを防ぐことはできなかったが、乾燥重量に差があったことやソウギョの死亡は確認されなかったことから、長期的にはある程度スイレンの抑制が期待される。


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