| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-213

山梨県における狩猟者の意識と人口動態からみた農業加害種の捕獲数増加要因

*竹田直人(農工大・院),梶光一(農工大),小俣謙(山梨県),本田剛(山梨総農試)

山梨県では,銃猟師は減少しわな猟師が増加している中で狩猟者全体は減少高齢化が進んでいる.その一方で,イノシシの捕獲数は大きく増加しているという食い違いが生じている.そこで,この食い違いの要因を探ることで,減少高齢化の中でも個体数管理を実施できる要因の解明を試みた.本研究は,狩猟方法の違いに着目し,2003年から2007年の出猟カレンダーの要因分析と山梨県内の狩猟者を対象としたアンケートを行った.

出猟カレンダーから一人当たりの捕獲数を同一年で比較すると,各年でわな猟師の方が銃猟師より有意に約2〜4倍多かった.経年変化をみると,増加傾向にあった年の中で有意に増加したのは2005年から2006年のわな猟師のみであった.したがって,イノシシ捕獲数増加に貢献しているのはわな猟師であることがわかった.各年での捕獲数に影響を与える要因分析の結果,銃猟師で負の相関を示したのは日曜日が最も多く,わな猟師では2005年のわな設置期間のみであった.ここから,わな猟師一人当たりの捕獲数が銃猟師より多いのは時間的な制約が小さいことが最も大きいと考えられた.したがって,近年のわな猟師の増加がイノシシ捕獲数増加に影響していることがわかった.

近年のわな猟師の増加の要因をアンケートから分析した.狩猟方法別に狩猟目的を見ると,イノシシを対象とする銃猟師の44.6%が被害防除を選択しているのに対し,わな猟師では73.4%と有意に多かった.また,1999年の先行研究と比較すると,2009年では被害防除のためが14.8%多い44.0%と最も多い割合で増加していた.こうした変化から,わな猟師の増加は狩猟目的の変化が要因となることが示唆された.

以上より,山梨県の狩猟者が減少高齢化していてもイノシシ捕獲数が増加したのは,わな猟師数の増加が重要であることがわかった.


日本生態学会