| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-217

房総半島におけるイノシシによる水稲被害発生要因:環境と対策の影響

*斎藤昌幸(中央農研/横浜国大)・百瀬 浩(中央農研)・三平東作(千葉農総研)

房総半島ではイノシシによる農作物被害が大きな問題となっている。被害対策を考えるために、被害発生に影響を与える要因を把握する必要がある。これまでに環境要因や被害対策の面からいくつかの研究がおこなわれているが、それぞれの要因を独立に評価したものが多く、より正確に評価するためには、両者を同時に評価する必要がある。また房総半島では、イノシシが分布拡大中であり、対策の効果も他地域と異なる可能性がある。本研究では、環境要因と被害対策が水稲被害発生に与える影響を評価することを目的とした。

調査は2009年8月に房総半島の水田でおこなった。イノシシが生息している範囲の中から、ほぼランダムに50個の3次メッシュ(約1km2)を抽出し、メッシュ内の水田1540枚で、被害の程度、周辺の草刈りの程度、柵の種類および柵の張り方を記録した。またGIS上で、林縁からの距離、道路からの距離などの景観要因と地上開度などの地形要因を算出した。これらの情報を使って、被害の程度を説明する累積ロジットモデルを作成して、評価をおこなった。

その結果、環境要因に関しては、林縁からの距離が近く、道路からの距離が遠いほど被害が発生しやすいことが明らかになった。一方、対策に関しては、電気柵やトタン柵は被害軽減に効果があるが、ネット類は効果が低い可能性が示唆された。また、水田周辺の草刈りも被害軽減に貢献していると考えられた。

本発表ではさらに解析をおこない、環境要因と被害対策の影響について議論する。


日本生態学会