| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-244

ヤンバルの林道における外来アリの分布

*大西一志, 諏訪部真友子, 菊地友則, 久保田康裕, 辻和希

沖縄島北部には、世界でも稀な湿潤亜熱帯島嶼性の広大な森林(通称やんばる)があるが、外来生物種の侵入による生物多様性の喪失と生態系の崩壊が懸念されている。アリは生態系への影響力が強く、IUCNのブラックリスト100にも5種の侵略的外来アリが含まれる。そのうちツヤオズアリとアシナガキアリは沖縄にもすでに分布しており、分布拡大が懸念される。外来生物の多くは一般に撹乱依存種であり、侵入先では人為により改変された場所で優占種となりやすい。やんばるのアリに注目すると、在来種、外来種ともに種数が多い。また、林道建設や皆伐など様々な人的撹乱環境が点在しているため、どんな微細環境にこれら外来種が侵入しやすく、そして優勢になるのか、多くの種に共通する一般的な結論を導くことが可能となるかもしれない。そこで、ヤンバル全域を網羅するように、道路沿い1km間隔で203箇所の調査地を設定した。そして、2005年から2009年まで毎年、フードベイトトラップ採集法を用いてアリ相の調査を行った。次に、それらの観測地点周辺の環境攪乱の規模を定量化するため、GIS上でバッファーを発生させ、過去から現在にかけての森林皆伐データに基づいて、自然度の指標を作成した。これを環境撹乱規模の指標とし、在来および在来アリの種ごとの出現データを用いて、各観測地点におけるそれぞれのアリ種の出現確率をベイズ推定した。一般に外来アリは撹乱環境ではびこると言われ、実際林内ではなく林道沿いだけにほぼ分布している。今回の結果からは、どんな周囲の環境下において、林道脇で外来種の出現頻度が増加するかについては、種の特性に依存し、在来種・外来種という単位では説明されないという結果が示唆された。また、5年間の継続調査から、アシナガキアリ、ツヤオオズアリについては、分布域が徐々に拡大しているという証拠は得られなかった。


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