| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-257

外来ヒキガエルの捕食圧によるクロオオアリ島嶼個体群の崩壊

*竹田祐輝(東邦大・理), 長谷川雅美

アリ類は多様な環境に適応しており、大きなバイオマスを有している。したがって、生態系の中での重要な捕食者、死体分解者として、生態学的に重要なニッチを占めている。

伊豆諸島の新島からは、現在4種のカエルが外来種として確認されている。その中でもアズマヒキガエル(Bufo japonicus formosus)は、体サイズが大型であることに加え、その分散能の高さから、島内の広範囲にわたって生態的な影響を及ぼしている可能性がある。本研究では、島内のヒキガエルの分布、および食性の解析と、ヒキガエルの生息域―非生息域間の地表徘徊性の動物の調査を通し、ヒキガエルによる捕食が島嶼の生態系へ与える影響について評価を行った。

ヒキガエルは島内のほぼ全域で確認されたが、島中央部の平地には、局所的にヒキガエルが多数生息している地域と、ヒキガエルが生息していない地域が近接していた。ヒキガエルの胃内容物の個体数のうち、7割をアリ類が占め、それに続いてワラジムシ目、甲虫類が多く食べられていた。ヒキガエルの生息域と非生息域に、それぞれピットフォールトラップを設置したところ、ワラジムシ目と大型の甲虫類の個体数に、地域間で有意な差が得られた。また、路上に設けたコドラート内で行ったアリ類のカウント調査の結果、14属24種のアリ類が確認されたが、ヒキガエル生息地域からは、開けた環境の最普通種であるクロオオアリ(Camponotus japonicus)を得ることができなかった。

AICを基準にモデル選択をした結果、クロオオアリの生息の有無にはヒキガエルの生息の有無が大きく影響を及ぼしていることが確認された。これらの結果から、クロオオアリ個体群の局所的な消滅は、ヒキガエルによる高い捕食圧にさらされた結果である事が示唆された。


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