| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-258

外来植物マルバフジバカマ(Eupatorium rugosum)の管理時期の検討 −地上部刈取りによる地上・地下部の資源配分に着目して−

*降幡和弘,藤原一繪(横国大・院・環境情報)

外来植物を管理する簡便な方法のひとつとして,対象が多年生草本である場合には地上部の刈取りが挙げられる.本研究では,北米原産のマルバフジバカマが生育している神奈川県秦野市弘法山公園を調査対象地とし,地上部刈取りによる9,11月のバイオマス量の比較を行った.

当該地域のマルバフジバカマは,4月下旬頃からその成長を開始し,刈取りを実施する7月中旬には,茎と葉が十分に展開している.また,8月中旬頃からは花芽の形成を開始し,刈取りを実施する9月には,花芽が十分に形成されていると同時に,開花個体も多数見られる.以上異なるふたつの時期について刈取りを行うことは,貯蔵物質を地上部の成長に十分利用した後であると考えられ,地下部衰退の効果が期待できる.

刈取り個体は,地上約10cmの高さで地上部を刈取り,7月および9月の刈取り後約2ヶ月の個体を掘り取り,地上・地下部に分けそれぞれ乾燥重量を測定した.非刈取り個体は,刈取り個体を掘り取ったと同時期に掘り取り,刈取り個体と同様に地上・地下部バイオマス量の測定を行った.

7月の刈取りでは,地上部の回復および当年の開花を抑制するが,地下部衰退は示唆されなかった.9月の刈取りでも7月と同様に,地上部の回復および当年の開花を抑制した.しかし,非刈取り個体においては9月から11月までの期間で地下部バイオマス量が有意に増加しているのに対し,刈取り個体では有意な増加がみられなかった.また,非刈取り個体で地上・地下部のバイオマス量の関係を調べたところ,それらの間には高い正の相関がみられた.更に,非刈取り個体で地下部バイオマス量と種子量の関係を調べたところ,それらの間には高い正の相関がみられた.

これらのことから,9月の地上部の刈取りは,次年度の地上部増大の抑制および種子繁殖抑制を狙うに当たって適当な時期であるということが示唆された.


日本生態学会