| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-267

神奈川県湘南海岸における外来草本オオフタバムグラの定着状況と適応戦略

*工藤裕章(東海大・院・人間環境),田中千惠,内田晴久,藤吉正明(東海大・教養)

オオフタバムグラ(Diodia teres)は、北米原産のアカネ科の外来植物であり、1927年に確認されて以来、現在では宮城県以南から九州までの河川や海浜環境で生育している。本研究は、神奈川県湘南海岸において、オオフタバムグラの環境傾度に伴う定着状況の把握と適応戦略を明らかにすることを目的とした。

定着状況を把握するために、湘南海岸3ヶ所(大磯町こゆるぎの浜、平塚市虹ヶ浜、平塚市高浜台)で人工物から汀線にかけての群落構造をベルトトランゼクト法により調査した。適応戦略としては、侵入要因を5つ特定(フェノロジー、食害有無、シードバンク、土壌栄養窒素とリン、他感作用)し、それらについて調査を実施した。

海浜植物の分布では、汀線から陸地に向かうにつれて種数は増加する傾向であった。汀線付近では、代表的な海浜植物であるコウボウムギやハマヒルガオが優占し、群落の中央から人工物にかけて陸地植物や外来植物の定着が確認された。オオフタバムグラは、群落の中央から人工物までの区間に出現し、分布の中心は人工物よりであった。適応戦力において、フェノロジーは上記の海浜植物に比べて実生の出現・開花・結実の時期が遅く、晩夏に開花・結実した。食害は、まったく確認されなかった。シードバンクについては、侵入および非侵入地で調査を行ったが、両箇所において実生が観察された。土壌栄養では、侵入および非侵入地の間で、ほとんど窒素とリンの栄養量の差は確認されなかった。他感作用では、オオフタバムグラの生育段階に応じて実験を試みたが、開花前の生長期において他感作用が確認された。これらの結果により、オオフタバムグラは、海浜において食害抑制が欠如した結果、シードバンクや他感作用により陸地側の海浜植物群落において分布を拡大していることが示唆された。


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