| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-338

行政支援によるため池−里山複合生態系保全に関する住民意識の改革.1

*阿藤正樹(三重県津農林水産商工環境事務所), 東 敬義(三重県埋蔵文化財センター)

近年、農業従事者の高齢化や減少により、ため池の維持管理の脆弱化によって構造が不安定になったため池は、集中豪雨や台風、地震で決壊することが多い。そこで、非農家住民も含めた地域ぐるみでため池を維持管理することで、それらの決壊被害を未然に防止する減災社会づくりが重視され、2004年3月に農林水産省は、「ため池群広域防災機能増進モデル事業」を創設した。三重県は伊勢平野に位置する津市片田田中地区において、地元自治会、地元小学校、県農林水産商工部、市農林水産部、財団法人水土里ネットみえで構成された協議会を設立し、2004〜2008年度に当該事業を実施することになった。そこでは、「決壊防止計画(ため池監視体制の強化)」、「洪水調節機能発揮計画(洪水調節容量の確保)」、「水利用調整計画(渇水時の用水配分)」、「多面的機能発揮計画(親水空間整備や生態系保全の構想)」の4つの基本計画を柱に「ため池保全活動」を行っている。とくに、非農家の住民がため池の役割について関心を持つには、農業用水や洪水防止の他に、やすらぎ空間や自然環境を中心とした「多面的機能発揮計画」を策定する必要があった。そこで、2004〜2005年度に、「植物」、「クモ類」、「昆虫類」、「魚類」、「両性類」、「は虫類」、「鳥類」、「地質」の調査を行った。その結果、希少種をはじめとして数多くの動植物が確認されたことから、本地区には豊かな自然が残っていることがわかった。その一方で、ブルーギルやミシシッピアカミミガメなどの外来種の存在が明らかになった。ここでは、非農家を含めた地域住民が、ため池や里山、農地を自然豊かな環境と防災環境を供給する地域の共有資産として認識し、地域ぐるみで保全する意識が芽生えることを目指した「ため池保全活動」の事例について報告する。


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