| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-339

参加型地域評価法による生態系サービス評価の試み-北海道鶴居村における事例

*庄山紀久子,Ademola Braimoh (北大・サス研), Suneetha M. Subramanian(UNU-IAS)

1961年の農業基本法の成立以降、釧路川流域の農牧草地造成が進められ,釧路湿原の面積は290 km2+から180 km2+に減少した。釧路川中流に位置する鶴居村は人口2,600人の酪農地帯であり湿原の陸地化が顕著な地域である。土地造成によって振興された酪農が主幹産業である一方、およそ8,500haの釧路湿原国立公園指定面積を含んでいる。土地利用/被覆の変化が湿原の生態系サービスに与える影響を評価する手法として、鶴居村住民を対象に参加型地域評価法(Participatory Rapid Appraisal, PRA)を試みた。過去およそ50年間の生態系と住民の生活の変化を住民視点からレビューすることで地域における生態系サービスと住民の福利(Human Wellbeing)の関係を明らかにすることが目的である。あらかじめテーマを4つ設定し、グループ毎に分かれて事前に用意した作業をもとに参加者がレビューを行う設定とした。各グループには地元で活動するファシリテータを配置し、議論、まとめ、発表の手順で行った。

主な議論は過去数10年における地域の自然環境と酪農システムの変化についてであった。特に酪農システムは大規模化に対応した効率化が急速に図られ、放牧の減少や機械化などより自然資源とは離れた営みへと変化したことから、供給サービスに関する資源価値は見出せなかった。一方で、多くの参加者が河川水位の変動や動植物個体数の増減など自然環境の変化に言及し人間活動との関連性を考察していた。今後さらに調整サービスやその他の基盤サービス評価について検討を行う。PRA手法は住民視点の傾向を把握し情報の共有を行うという点から有効であるが、ステークホルダー間の違いを見出すためにはより詳細な設計が必要である。


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