| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-341

栃木県の里山における鳥獣害と大学と自治体の連携による人材養成の取組み

*高橋俊守(宇都宮大・里山セ),伊藤愛(宇都宮大・里山セ),丸山哲也(栃木県),小金澤正昭(宇都宮大・演習林)

近年、全国的に野生鳥獣による農林業被害が急増している。農林業被害は単に農業収入に影響があるだけではなく、農林業従事者へ心理的なダメージをも与える。それゆえに営農意欲の減退を引き起こし、農林業、ひいては地域の衰退を招く一因ともなっている。鳥獣害に対しては、従来から様々な被害対策が採られているものの、生態等科学的知見の不足から、実態に合わない対策が行われることが多々あった。また、被害対策は農家個人の努力・工夫によるところが多く、地域ぐるみの対策が行われにくい状況となっている。野生鳥獣による農林業被害を防除するには、科学技術を基盤とした効果的な対策を地域が一体となって行う必要があり、野生鳥獣の生態や農林業被害の防除手法に関する専門的な知識・技術を有する地域に密着して活躍する人材が求められている。

そこで宇都宮大学では、栃木県と連携して、地域の相談役ともなる専門的な知識・技術を有する指導者を養成することを目的とし、平成21年度から里山野生鳥獣管理技術者養成プログラムを実施している。本プログラムでは、地域での情報収集から解決法の提案まで、科学技術を基盤としたトータルな計画を立案することのできる「地域鳥獣管理プランナー」及び、野生鳥獣の生態学的な知見から、鳥獣害の現場で適切な指導・助言を行うことのできる「地域鳥獣管理専門員」を養成することを目的とする。修了後は「地域鳥獣管理士」の資格を付与し、大学や県、市町村とで構築されるネットワーク組織である「里山野生鳥獣管理協働フォーラム」を拠点として活躍することとなる。初年度の受講生は学生、自治体職員や会社員等の一般社会人を含め39人となった。今回はプログラムの取り組み内容の詳細について報告する。


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