| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S07-3

屋久島における広域大気汚染の影響

永淵修(滋賀県大)

演者は、1990年代以降、九州の山岳部で長距離輸送される大気汚染物質の調査を

行い、屋久島では、1990年代半ばから越境大気汚染物質による陸水および森林へ

の影響を研究してきた。その結果、屋久島においては降下物の主成分は硫黄化合

物であり、陸水の酸性化が母岩や土壌の化学風化により押さえられ,それに利用

されるプロトンが土壌中のCO2からだけではなく、水中の硫酸のプロトンを加えることにより理論値と同等になることを明らかにした。一方、森林に対しては、

硫酸エアロゾルが針葉に影響を与えていることを明らかにした。ここでは、2000

年代半ば以降大きな社会問題になっている大陸起源のO3について、屋久島の森林地帯における高濃度オゾンとの関連を報告する。パッシブサンプラーを中心とし

た10年以上の測定の結果から、屋久島のO3濃度は冬季から春季にかけて100ppbを超えるような高濃度を示し、日変動も一般都市大気のような規則性のあるものではないことが明らかになった。この原因を明らかにするために屋久島の北部に位

置する一湊中学の屋上にオゾン計を設置し、O3濃度の日変動、季節変動を測定し、屋久島の高濃度オゾンの原因を2009年の2月から12月までの10分間隔のデータ(7

-8月欠測)を用いて検証した。O3濃度は季節的には冬・春が高く、夏に低かった。特に小笠原気団の影響下にある場合は低濃度で推移した。一方、冬・春では、大

陸からの気団が入ると50ppb以上の濃度なる確率が高かった。日変動については

様々に複雑な変動を示した。これらについて詳細に流跡線解析を行った結果、大

陸からの気団が入れば高濃度になり、他の方面からの気団では低濃度になること

が多いことが示された。屋久島における卓越風は西風であり、年間を通して大陸

からの気団に晒されているため、屋久島の高濃度O3の起源は大陸起源である可能性が非常に高いことが示された。


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